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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2005年7月14日配信)

第11回『夜更かししナイ(5)~便秘とニキビについて3~』

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 7月も中旬となり、夏真っ盛りと行きたいところですが、読者の方のお住まいの地域はいかがでしょうか? 昨年のように台風は来ないものの、水不足から一転して大雨や洪水などに襲われ、大きな被害を受けた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 英国では7月7日に同時テロで大きな被害が出てしまいましたが、日本でもいつ大きなテロが起きないとも限りません。安全は日頃からの心がけが大事だと思います。ちょっと面白いHP(http://www.howtosurvive.org/)を見つけましたので参考にして下さい。(内容については責任は持てません。悪しからず。)

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々ですが、このコラムが皆様のニキビ改善のちょっとしたヒントになれば幸いです。梅雨明けはまだのようですが、エアコンの効いたオフィスなどでは空気は乾燥しておりますので、お肌の保湿や体調に十分注意して下さい。

 とかち美白研究所では、VCローションを購入されている方に会報を毎月発行しております。そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4ナイ)』というものを載せています。(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

  • (1)爪を切っていじらナイ
  • (2)髪の毛で隠さナイ
  • (3)夜更かししナイ
  • (4)乾燥させナイ
 

これは私が皮膚科診療を15年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

   

 前回は、『夜更かししナイ(4)~便秘とニキビについて2~』と題して、前々回に引き続いて、便秘がニキビの悪化原因の一つであり、『排便ネットワーク』の存在をご理解いただいた上で、生活習慣面での便秘解消の具体策をお示しいたしました。

 今回は便秘に関して身体面における『横隔膜と腹筋群等』の重要性をお話させていただき、〆とさせていただきます。

 消化・吸収・排便のメカニズムの裏にある、大脳を含めた多くの神経回路の伝達が必要とされる(B)『排便ネットワーク』について復習しましょう。

(B)『排便ネットワーク』

  • (1) 食物は食道を通過して胃に入り『入荷しました!』という刺激を伝えます。
  • (2) その刺激で腸が動き出し、食物は消化されて『便』となり、胃、十二指腸、小腸を経て、大腸、更にその先の直腸へ『便』を送りだします。
  • (3)『便』が直腸に達するとその刺激は、骨盤神経を経て脊髄を通り、小脳の近くの橋という部分にある『排便中枢』に達します。
  • (4)更に刺激は『大脳』の皮質知覚野に達し『便意』を感じることになります。
  • (5)『便意』を感じると、人は状況によりトイレに入り『排便』の準備をします。
  • (6)便座に座り、呼吸を止め、『横隔膜と腹筋群』を働かせて、腹圧を上昇させます。
  • (7)直腸の内部が一定以上の圧力になると反射的に直腸が収縮し、肛門括約筋が緩み、めでたく『排便』となります。

 便秘がちの方は、『骨盤と腸との関係』や『横隔膜と腹筋群等の働き』に問題があることが指摘されます。両者は密接に関係しており、今回はここに的を絞って、対策を交えながらお話させていただきます。((i)~(iii)は前回の問題点となります。第10回のコラムを参考にして下さい。)

(iv)『骨盤と腸との関係が不適切 特に横隔膜と腹式呼吸の重要性について』  ーーー(B)『排便ネットワーク』主に(2)の障害

 男性に比べて女性の場合は身体的な特徴も便秘が起こり易い原因になります。それは出産に適した体であるため、『骨盤が広い』という事です。女性では腸が骨盤内に落ち込みやすく、骨盤内に落ち込んだ腸は折れ曲がって固定が悪くなります。男性は骨盤が狭いためそういった状態にはなりにくいのです。

(男性の腸)==========

 

(女性の腸)→→↓
↓→→→↑→→

のようなイメージです。便が通りにくくなるのがわかっていただけると思います。また、骨盤と腸との位置を決定する上で非常に重要な働きをするのが、『横隔膜』です。

 『横隔膜』は胸腔と腹腔を境する筋肉性の膜です。上面は心臓・肺に接し、下面は胃・肝臓・脾臓などに接し、収縮・弛緩することにより肺の呼吸作用を助けます。更に、『横隔膜』には胃腸の状態や位置を正常に保つ働きがあります。ところが、それが衰えると胃腸が垂れ下がり、骨盤の中に入り込んでしまうと考えられるのです。これでは、スペース不足で動きにくくなり、便を上手く直腸まで運び込むことができず、益々、便秘慢性化に拍車をかけることになるのです。

 『横隔膜』の衰えは呼吸法と密接な関係があります。呼吸法には主として息を吸うと胸が膨らむ胸式呼吸と、お腹が膨らむ『腹式呼吸』があります。女性の場合は、胸式呼吸が多いようで、これが便秘を生む原因の一つとなってしまうのです。

 胸式呼吸は肋骨の間にある肋間筋を、『腹式呼吸』では『横隔膜』を使っています。そして、『横隔膜』を使った方が肺が大きく膨らみ、より多くの空気が吸えるのです。『腹式呼吸』を行うと、『横隔膜』は上下に動きます。すると、『横隔膜』によって腹部の内臓が刺激され、内臓の動きが活発になります。胃の血行が良くなれば胃もたれなどが解消できますし、腸の動きが良くなれば便秘にも効果があります。
つまり、『腹式呼吸』は『横隔膜』で内臓のマッサージを行うようなものなのです。
 また、腹式呼吸は腹筋を使いますので、姿勢も良くなり、気になる下腹のたるみも引き締まってくることが期待できます。

(対策)『腹式呼吸』は、仰向けに寝た状態で練習すると簡単です。最初はお腹に軽く手を当てて、ゆっくりとお腹を膨らませながら息を吸い、吐くときはゆっくりと息を絞り出すように吐きます。その際は、腰を持ち上げたりしないようにしましょう。寝る前に練習するようにすると、呼吸によるリラックス作用が働きぐっすりと眠りやすくなります。また、カラオケが好きな人は、歌を歌うのも腹式呼吸の練習になります。マイクのエコーに頼らず、お腹の底から大きな声を出してみましょう。

(v)『横隔膜と腹筋群、更に、骨盤周囲の筋肉の共同作用の重要性について』
ーーー(B)『排便ネットワーク』主に(6)(7)の障害

 (iv)で述べた通り、『横隔膜』は、肺の呼吸作用を助ける筋肉ですが、排便時に腹圧を上げて、便を押し出すためにも非常に重要です。また、これは『腹筋群』との共同作用によって行われるもので、どちらか片方が衰えてしまっても排便することができなくなります。更に、最終段階(7)で働く、骨盤周囲の筋肉も重要です。対策としては、医学的に理論がしっかりとしていて効果が期待できる2つをあげてみました。

(対策)
(1)「ナンバ式骨盤ほぐし」

 「ナンバ式骨盤ほぐし」は、体の骨盤あたりに『骨盤ボックス』という箱をイメージし、それを動かす体操で簡単です。有効と思われます。

参考文献
1.『「ナンバ式骨盤ほぐし」でウンチでるでる大作戦』日経ヘルス 2005年7月号
  2.『ナンバ式骨体操』矢野龍彦、長谷川智監修 光文社

(2)「腹横筋」を使ったお通じ改善法

 呼吸をするとき、普通の腹式呼吸に加えて腹横筋を使う深腹式呼吸を心がけます。排便のとき、呼吸を止めて息む、いわゆる気張るのをやめて息を吐きながら、おなかに圧を加えていく方法です。これも簡単で有効な方法と思われます。

参考文献
1.『おなかすっきり 心すっきり』 荒木隆次 著 二瓶社

今週のポイントはこんなところでしょうか?

 『ニキビが良くならない方は便秘がちな方が多いです。便秘はニキビや肌荒ればかりでなく、頭痛、めまい、肩こりなどの体の不調、更には、動脈硬化、ガンや肥満の原因にもなる万病のもとです。
生活面では、(1)朝食を毎日とる。(2)間食を避ける。(3)便意を我慢しないで済むように自分でトイレタイムを作り出す。以上の3点が重要です。
 身体面では、(1)『横隔膜』を使った『腹式呼吸』を心がける。(2)『横隔膜と腹筋群、更に、骨盤周囲の筋肉の共同作用』を高めるために有効な簡単な体操もありますよ。』

 以上大変長くなってしまいましたが、便秘改善にお役立て下さい。

 次回は、管理人さんより依頼があり『ニキビと抗生物質』について説明してみたいと思います。それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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