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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2005年9月15日配信)

第13回『乾燥させナイ(1)』

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 当地では5月に降雪を記録したものの、台風も少なく気温もまずまずで過ごし易いなと思っていました。しかし、アメリカではハリケーン『カトリーナ』によるニューオリンズの水没、日本では宮崎県を中心に台風14号により大きな被害が出てしまいました。犠牲になった方々と、そのご遺族の皆様、被災された皆様に心からのお見舞いを申し上げます。

 個人的には昔からSFが好きで映画などもよく見ます。最近の災害は映像技術の進歩もあるとは思いますが、現実の映像の方がSFの映画を超えるような『想定外なもの』になってきているようで、恐い感じがします。先日も東京都心に住んでいる小学校以来の超楽観的な友人より、『持って逃げる物は一応まとめつつあります。』とのメールをもらいました。防災、防犯など、準備しておくことに『し過ぎ』はありません。気持ちを引き締めて危機管理をしていきたいものですね。

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々ですが、このコラムが皆様のニキビ改善のちょっとしたヒントになれば幸いです。朝晩は徐々に冷え込み秋の気配ですが、お肌の保湿や体調に十分注意して下さい。

 とかち美白研究所では、VCローションを購入されている方に会報を毎月発行しております。そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4ナイ)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

  • (1)爪を切っていじらナイ
  • (2)髪の毛で隠さナイ
  • (3)夜更かししナイ
  • (4)乾燥させナイ
 

これは私が皮膚科診療を15年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 今回からは、(4)乾燥させナイ(1)と題して、『なぜ肌が乾燥するとニキビが悪化するのか?』について説明させていただきます。
 ここでポイントとなることは以下の2つです。

  • (A) 『皮脂』の分泌を適切に保つ
  • (B) 『角質層』がバリア機能、保湿機能を十分に果たせる状態を作り出す

ことが重要になります。
 まず今回は、基礎知識として皮膚の構造について説明し、次に『皮脂』と肌の乾燥の関係について触れたいと思います。

★皮膚の構造について

 皮膚は汗を出して体温を調節したり、痛みや熱さを感じたり、からだを守る防御膜(バリアー機能)として働くなど、様々な役割を担っています。  なかでもバリアー機能は大切な働きの一つで、体の内側と外側を区別して外から有害なものが入ってくるのを防ぎます。

 皮膚は一番外側から(i)表皮(ii)真皮(iii)皮下組織の3層から構成されますが、ニキビで問題となるのは(i)表皮です。
(http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec18/ch201/ch201b.htmlを参考にして下さい。)
 表皮は、バリアー機能の最前線で、主に表皮を構成する(a)皮脂膜と(b)角質層の働きによって保たれます。また、次回以降で重要となる以下の(c)天然保湿因子、(d)角質細胞間脂質も重要です。

  • (a)皮脂膜:皮脂腺から分泌される『皮脂』と汗が混ざり合ってできた天然の保護膜で、角質層の水分の蒸発を防ぎます。
  • (b)角質層:角質細胞が何層にも重なり合って、防御膜の役割をしています。この角質細胞は実際は死んでいる細胞で、ターンオーバーにより約4週間で生まれ変わっています。このターンオーバーが順調に機能することによりキメの整ったしっとりした肌が維持されます。
  • (c)天然保湿因子(NMF):NaturalMoisturizingFactorともいわれ、角質層の中にあり、水になじみやすく水分を保持する水溶性のアミノ酸、塩類のことです。水分をつかまえて離しません。
  • (d)角質細胞間脂質:角質細胞と角質細胞のすき間をうめている脂のことで、細胞同士をつなぎ止める働きをしています。角質細胞の水分の蒸発を防ぎます。

★『皮脂』と肌の乾燥の関係について

 『皮脂』は、皮膚表面に皮脂腺という腺を通って分泌される脂肪のことです。この皮脂は汗などと混じって薄い脂肪の膜、皮脂膜をつくりますが、この皮脂膜が皮膚の表面を覆うことで、うるおいを与え、乾燥を防ぎ、外界の刺激から皮膚を保護しています。

 しかし、何らかの原因で『皮脂』の分泌が盛んになると、多すぎる皮脂や皮脂と肌の老廃物が混ざったものなどが刺激となって、皮脂の出口となる毛穴の角質を増やしてしまい、出口をせばめてしまったり、ふさいでしまったりします。すると、外に出られなくなった皮脂がつまって溜まってしまい、白っぽくポツンと丘疹状のものができてきます。これが『白ニキビ』です。

 さらに症状が悪化すると、皮膚に常在する細菌による作用により炎症が起きてしまい、赤く腫れたり化膿して膿がたまってしまいます。これが『赤ニキビ』です。

 『皮脂』が、何らかの原因で多量に分泌された結果できるのがニキビというわけです。皮脂が多量に分泌される原因としては、(I)ホルモンバランスの崩れ(II)皮脂の不適切な除去 の2つがあげられます。

(I)ホルモンバランスの崩れについて

(I)ー1 男性ホルモンの分泌過剰について

 思春期に出来るニキビに、最も大きな影響を及ぼしているのが男性がより多く分泌する男性ホルモンです。皮脂分泌を活発にするという働きがあります。女性より男性のほうが脂性肌になりがちで、乾燥肌で悩む男性が少ないのはこのためです。また、肌質、つまり遺伝的素因も関係しており、皮脂分泌の活発な脂性肌のほうがニキビはできやすいことがわかっています。

 「女性には、男性ホルモンはないのでは?」と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、女性でも副腎皮質というところで作られており、特に思春期から青年期にかけての肉体の発達にともない、この男性ホルモンの分泌が高まってきます。

(I)ー2 女性ホルモンの分泌バランスの崩れについて

 一方女性ホルモンのうち、卵胞ホルモンは皮脂分泌を抑制する働きを、黄体ホルモンは皮脂分泌を高める働きをもっているため、これらホルモンのバランスによってもニキビの出来やすい状態が作られます。

 これらをチェックするには婦人科の専門医の診断が必要となります。第6回のコラムを参考にして下さい。

(II)皮脂の不適切な除去

 皮脂分泌が盛んになると、ついつい皮脂を除去しようとお手入れしがちになります。適度に除去できれば良いのですが、脱脂力の強い洗顔料を使い過ぎたり、誤った洗顔法でこすったりすると肌を守る皮脂を取り過ぎてしまいます。

 そうすると肌は皮脂が不足していると勘違いし、皮脂をたくさん分泌することにより皮膚のバリアー機能を維持しようとします。こうして過剰分泌が起き、ニキビの原因となります。全くの悪循環です。

 肌質は皮脂分泌量の多少と、角質層の保水力の多少から乾性肌、脂性肌、乾燥型脂性肌、普通肌の4つに分類されるのが一般的ですが、乾性肌と脂性肌とが混在する混合肌もあります。

 自分の肌質を適切に判断することはなかなか難しいですが、『肌を守る皮脂を取り過ぎない』ということが実は非常に重要なことなのです。更に次回以降で説明しますが、保湿が重要であることはいうまでもありません。

今週のポイントはこんなところでしょうか?

『ニキビの原因の一つに皮脂の過剰分泌があります。ニキビが良くならない場合、ホルモンバランスの崩れに注意し、肌を守る皮脂を取り過ぎていないかチェックしましょう。「皮脂」の分泌を適切に保つことがニキビ改善のポイントの一つです。』

 次回以降で、更に『角質層』を含めた保湿の重要性、解決法について説明してみたいと思います。それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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