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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2009年12月20日配信)

第64回 『尋常性ざ瘡治療ガイドライン ~十味敗毒湯について~』

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 10年ぶり位にライブに行ってきました。高校時代からファンだった、デイヴィッド・サンボーンです。( http://ja.wikipedia.org/wiki/ デイヴィッド・サンボーンを参考に)
 たまたま、診療所のお隣の『音更町文化センター』で12月6日(日)に公演があり、演奏を聴くことができたのです。

 デイヴィッド・サンボーンは、ジャズ・フュージョン界で活躍するサックス奏者で、グラミー賞を6回受賞するなど素晴らしいプレイヤーです。歌うように奏でるその音色は「泣きのサンボーン」とも呼ばれています。
 地方公演なので、どんなものかな?と思っていましたが、さすがプロ。手抜きは一切なしで、全力で演奏してくれました。

 私は幸運にも、2列目中央(!!)の席で演奏を聞くことが出来ました。距離にして5~6m—。表情やサックスの指使いもわかる程でした。
 時には笑みを浮かべて本当に楽しそうに演奏していました。その様は、実に『カッコイイ!!』の一言に尽きました。
 『好きこそ物の上手なれ』を心の底から実感できる演奏でした。

 私の場合、ニキビでお悩みの方も含めて、患者さんが少しでも良くなるお手伝いをさせていただけることは大きな喜びです。
 このコラムがそんな一助になれば最高だなと思いつつ、自分自身が一歩でも前に進むつもりで、毎月お届けさせていただいています。

 とかち美白研究所では、VCローション等を購入されている方に会報を毎月発行しております。

 そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

ニキビ治療の4ヶ条(4決め!)

今日から私は以下の4つを良く守り、
ニキビ改善を目指すことに決めました!

  • (1)爪を切って手は下に置くことに決めました。
  • (2)髪型は適切にアレンジすることに決めました。
  • (3)規則正しい生活を送ることに決めました。
  • (4)お肌はしっとり潤いを保つことに決めました。

 これは私が皮膚科診療を19年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、第15回までは『ニキビ治療の4ヶ条』を系統立てて解説してきました。

 第16回からは『落ち穂拾い』と題して、『ニキビ治療の4ヶ条』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。

 これは私が皮膚科診療を19年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 皮膚科医がニキビの治療、特に保険診療を行っていく上での指針となる「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」が、2008年秋に日本皮膚科学会誌上で発表されました。 (詳しくは http://www.dermatol.or.jp/medical/guideline/pdf/118101893j.pdf

 前回は、ガイドラインにおける漢方薬治療全般について、お話しさせていただきました。

 推奨度は、以下のように分類されます。(簡略化しています。)

推奨度の分類

A行うよう強く推奨する
B行うよう推奨する
C1良質な根拠は少ないが,選択肢の一つとして推奨する
C2十分な根拠がないので(現時点では)推奨できない
D行わないよう推奨する

 ガイドラインでは、漢方薬を用いた漢方療法はC1、C2と少し低めの評価です。  でも、実際の所はどうでしょうか? 漢方療法はニキビの重要な治療法の一つ。

 今回は、皮膚科医の間で話題の漢方薬で、私も処方して効果を実感できた、『十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)』について、お話しさせていただきます。

 『十味敗毒湯』は、江戸時代、世界で初めて乳癌の麻酔手術を行った、当時の世界的な医学者、華岡青洲(はなおかせいしゅう)によって創られた、「瘍科方筌(ようかほうせん)」に収載されている漢方薬です。

 できものや急性で発赤し腫れて痛みのある化膿性の皮膚疾患、湿疹、じんましんなどかゆみや熱をもったり化膿するおそれのある皮膚疾患に使われています。(適応:化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんま疹、水虫)

 私は、『十味敗毒湯』については、あまり使用経験がなく、メーカーの担当者より熱心な説明を受けてはいたものの慎重でした。
 しかし、今年4月の日本皮膚科学会総会のセミナーで、『十味敗毒湯』を取り上げた講演を聴き、講演の内容が素晴らしく、かつ、大変実用的であったため、処方してみることにしました。

 漢方薬は、患者さんによっては、『粉が苦手』とか『味が駄目』などの好みがはっきりと出ます。
 そこで、クラシエ薬品の『十味敗毒湯 エキス錠』を採用しました。

 難点は、『成人1日18錠(!!)を2~3回に分割し、食前または食間に内服』という内服量の多さです。
 『きちんと量を内服しないと効果がない』と聞いていましたので、『1日2回なら1回9錠、1日3回なら1回6錠、必ず飲んでね!!!」と患者さんへ最初に処方する時には、念を押しています。
 また、再診時には、『1日18錠きちんと飲んでますか?』と必ずチェックしています。

 対象とする患者さんは、一般的な保険診療で、ミノマイシンなどの抗生剤を処方してあまり効果がみられない、頬や顎に目立つニキビ(炎症性皮疹)がある患者さんです。
 いきなり初診時に処方はしません。

 効果については、漢方薬の中では早めに効果が出るようです。再診時には改善している患者さんが多く、継続する場合がほとんどです。

 『1日18錠』という高いハードルが、患者さんにとっては、『こんなにきちんと飲んでいるのだから、絶対によくなるはず!!』といった感じでニキビ治療に対する意識を高め、良い結果につながっている可能性もありますね。
 副作用については、胃の不快感を訴えられる方がいらっしゃる程度です。その不快感も効果が出てくるにつれて薄れてくる方がほとんどです。

 また、ニキビ以外では、アトピー性皮膚炎で、掻破による傷がジクジクする難治の患者さんや、頭部の難治の毛穴の炎症の患者さんに処方した所、良い効果が得られました。
 男性では効果が薄いという話も聞いていましたが、私の個人的な感じでは男女差はないと思います。
 必要なのは、男女限らずに『何とかニキビを改善したいという意欲』ではないかと思っています。

 私の2009年のちょっとしたニキビ治療に対するチャレンジの一つ、『十味敗毒湯』。これは予想以上のものでした。
 長く診療しているとつい今までのやり方にこだわってしまうものです。今回、この薬との出会いは大変大きなものでした。

 全くの個人的見解ですが、2008年のニキビ治療大賞が、『ディフェリンゲル』とすれば、2009年のニキビ治療大賞は、『十味敗毒湯』です。
 2010年のニキビ治療大賞は何か? それを発見するには、日々の勉強と柔軟性が大切ですね。意外と身近な所にあるのかもしれません。

 次回は、『尋常性ざ瘡治療ガイドライン~化粧(メイクアップ)指導について~』です。

 今回のポイントは以下の通りです。

【今回の4決め!落ち穂拾い】 「落ち穂 その48」

『尋常性ざ瘡治療ガイドライン~十味敗毒湯について~』

  • •皮膚科医がニキビの治療、特に保険診療を行っていく上での指針となる「尋常性ざ瘡治療ガイドライン」が、2008年秋に日本皮膚科学会誌上で発表されました。
  • •治療方法により以下の推奨度が示されています。

    A 行うよう強く推奨する
    B 行うよう推奨する
    C1良質な根拠は少ないが,
       選択肢の一つとして推奨する
    C2十分な根拠がないので
       (現時点では)推奨できない
    D 行わないよう推奨する
  •  
  • •ガイドラインでは、漢方療法はC1、C2と少し低めの評価です。
  • •ガイドラインでは、漢方療法について、イ)面皰 と ロ)炎症性皮疹 の2つに分けて、評価しています。
  • •『十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)』は、
    イ)面皰 について、
      行ってもよいが推奨はしない(C2)
    ロ)炎症性皮疹 について、
      選択肢の一つとして推奨する(C1)
    の評価です。
  • •漢方薬は、患者さんにより好みがあるため、『十味敗毒湯 エキス錠』を処方してみました。
  • •ミノマイシンなどの抗生剤を処方してあまり効果がみられない、頬や顎に目立つニキビ(炎症性皮疹)がある患者さんを対象として処方してみました。
  • •漢方薬の中では早めに効果が出ます。再診時には改善している患者さんが多く、継続する場合がほとんどです。
    胃部不快感が副作用です。
  • •『1日18錠』という内服量の多さが、治療上のハードルです。
  • •高いハードルが、患者さんにとっては、『きちんと飲んでいるのだから、絶対によくなるはず!!』とニキビ治療に対する意識を高め、治療効果が高まります。
  • •全くの個人的見解ですが、2008年のニキビ治療大賞が、『ディフェリンゲル』とすれば、2009年のニキビ治療大賞は、『十味敗毒湯』です。

 早いもので今年もあとわずか。

 『新』が 『今年の漢字2009』 だそうですね。時代が『新』しいスタートを今年切ったとすれば、来年は、助走をつけて大きな展開を見せてくれる年になるはずです。
 新しい変化を恐れることなく、前向きに行きたいものですね。

 来年もよろしくお願いいたします。

 それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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